先天性心奇形

もちろん、小児外科医が心臓の手術をできる必要はありません。しかし、相当高いレベルの知識を身につけるべきであると僕は考えます。日本小児外科学会には小児心臓外科医が含まれていますし、海外の小児外科手術書を見ると必ず心臓手術が書かれています。歴史的にも「一般小児外科」と「小児心臓外科」は密接不可分なのでしょう。
我が母校、千葉大でも現在では新生児心臓外科疾患は、複雑で無いものであれば院内で手術できるようになっています。しかし、僕が研修医だった昭和の終わり頃は、PDAの結紮というだけで大騒ぎでした。忘れもしない、食道閉鎖に合併したPDAの赤ちゃんに手術を行うことになった時、、、手術室は黒山の人だかりで術野なんてまったく見えませんでした。隔世の感があります。
と、同時に新生児医療の分業も時代とともに進んでいます。これは小児がんの治療と同じです。小児外科医が新生児の手術をして、1週間も2週間も徹夜に近い状態で連日泊まりこむ、なんていうのは今やアナクロかもしれません。であれば、小児外科医は先天性心疾患の知識なんて要らないという話しになりますが、それでは小児外科医はただの「手術屋さん」になってしまいます。子どもの体、赤ちゃんの体の中を知り尽くしてこその小児外科医です。
とりわけ先天性横隔膜ヘルニアでは循環器の高度な知識が必須です。心奇形を合併することも多いし、ECMOの管理はまさに循環系の管理そのものです。若い先生たちには貪欲に心臓の勉強をしていただきたいと思います。