先天性小腸閉鎖

小腸閉鎖の手術は、やることといえば腸と腸を吻合するだけです。しかし、小腸閉鎖は一般外科医には絶対にできない手術です。
小児外科の手術の基本は小腸閉鎖にあると言う人もいます。まあ、そうかもしれませんが、腸吻合という技術は小児外科のエッセンスでは必ずしも無いような気がします。しかしながら、やはり腸吻合というのは奥が深い。吻合した腸と腸はどうやって癒合するのでしょうか?漿膜レベルでの癒合を重視する立場がLembert吻合です。実際には2層で縫うことになりますから、Albert-Lembert法になります。一方、粘膜下層での融合を重視するのが1層吻合であるGambee吻合です。Albert-Lembertで子どもの小腸を縫うと術後狭窄を来たすと考えられますので、この吻合法が用いられることはありません。では、Gambeeでしょうか?高橋名誉教授は小児の消化管吻合の最も理想的な吻合法をGambeeと考えていた節がありますが、現実的に新生児の小腸をGambeeで縫うのは至難の業です。そこで最も好んで用いられるのがHepp-Jourdanということになります。
粘膜下層の豊富な血流を考慮に入れると、やはり最も理にかなっているのは粘膜下層での癒合を重視するGambee法かHepp-Jourdan法でしょう。最悪なのは全層1層吻合ということになります。僕自身も、乳児の大腸を後壁を全層1層、前壁をHepp-Jourdanで縫ったことが何度かあります。合併症は経験したことはありませんが、これは基本から外れていると言わざるを得ないでしょう。まず前壁をHepp-Jourdanで縫って、腸をひっくり返した後、後壁もHepp-Jourdanで縫うべきです。
では、問題の新生児の小腸はどうでしょうか?僕はすべての症例で前後壁をHepp-Jourdanで吻合しましたが、外野からは「今の1針、全層?」とかってよく野次られたものです。確かに簡単ではありません。まあ、敢えてコツを述べれば、、、層々二列吻合のシェーマ、ありますよね?あれをイメージして漿膜は外翻(Lembertでは内翻)、粘膜は内翻になる感じで縫っていました。
糸は5-0縒り糸吸収糸を使っていました。縒り糸は閉める時にギューとなるので信頼感があるんですね。モノフィラメントを好む先輩や教室員が多かったようですが、あれは閉める時に、キキッ、キキッとなるので僕はどうしても信頼をおくことができませんでした。
まあ、要は自分なりの感覚を早く身に付けることだと思います。ちなみに大人の消化管をどれだけたくさん縫っても小児の消化管吻合には何の役にも立たないと思います。