先天性食道閉鎖症

新生児外科疾患の卒業試験のような手術です。やはり、この手術ができて、はじめて小児外科医と言えるでしょう。
では、難しい手術かと言われると僕はそうは思いません。この手術も解剖に基づいた定型的な手術です。では、Long gapは難しくないのかという声が聞こえてきますが、届かないものは届きません。一期的吻合を諦めるだけのことです。では、届きそうで届かない症例は?確かにあるんですよね、そういう症例。つまり吻合部にtensionがかかる症例ですね。これは難しいです。tensionを回避するために剥離をしすぎると断端の血流が悪くなります。結局はこのあたりの見極めでしょうか、最大のポイントは。Rivaditisを行う勇気も大事です。
通常の症例であれば、新生児の食道食道吻合と言えども決して困難ではありません。3,000gでも1,500gでも同じことです。ただ、僕は吻合の際に、持針器にはこだわりました。心臓外科医が使う血管吻合用のものを使っていました。これが軽くて良いんです。で、コツをひとつ。針を持ったら持針器をロックしないんですね。ロックすると、食道壁を貫いた状態の針を離す時に、針が動いて食道壁を痛めるんです。ですから、ロックはせずに針を持って運針したら静かに針を離すんです。Upper Pouchはネラトンが透けて見えるくらい薄いのが通常ですから、このくらいの気配りは必要です。吻合部を大事に扱えわないと、術後の合併症につながります。
そう、合併症が本当に多い疾患ですよね。かつては、食道閉鎖の治療成績は、イコール、その施設の技術水準みたいに言われた時代もありましたが、今や治して当たり前。Spitz分類でいうところのリスク因子(体重・重症心奇形)が無ければ、僕自身、亡くなった症例は見たことがありません。しかし、マイナーな合併症はなかなか無くなりません。マイナー・リーク、術後狭窄、TEF再開通などです。これらの治療はけっこう大変で、小児外科医としての力量が問われたりします。
根治術の際に、胃ろうを作らない施設もあります。まあ、麻酔管理は必ずしも胃ろうを必要としないでしょう。しかし、術後の合併症のことも考えて胃ろうはあっても良いかなという気がします。