頸部のう胞(ろう孔)性疾患
僕が医学部6年生の時に小児外科のベッドサイドラーニングで最初に見学した手術が正中頸のう胞でした。脳と心臓と骨以外はすべて手術する小児外科らしい手術ともいえます。正中頸のう胞や側頸ろう、下咽頭梨状窩ろうなどの手術を初めてするときは、みなさん、本当によく解剖の勉強をすると思います。筋肉や神経、血管の名前が次から次に出てきますよね。若い頃は解剖学の知識に基づいてばりばり手術しますが、年齢をとっていくと頭頸部をいじることの怖さがだんだん分かってきます。で、そこでやっぱり解剖の勉強に立ち返る訳です。手術の怖さを乗り越える唯一の方法は解剖を徹底して学び直すことだけです。ここのステップをアバウトにすると思わぬ落とし穴に落ちたりします。頸部のう胞性疾患は日常疾患とも言えるし、それほど多くないとも言えるし、なんとも手術症例数が微妙なために中堅くらいの小児外科医になるとへんな慣れが出たりします。こんな時に、思わぬ出血に遭遇したり、解剖が分からなくて冷や汗がたらりと流れたりするのです。僕自身は術者として痛い思いはしたことはありませんが、若い先生の前立ちをしていて怖い思いをしたことは何度もあります。つまり、この先生、解剖をちゃんと理解しているのかしら?もしかして僕にリードしてもらおうと思って勉強して来なかったのでは、、とにわかに自分が緊張したことも何度か。まあ、勝手な思い込みかもしれませんが。
正中頸部のう胞では、最後の舌盲孔での処置をきちんとしましょう。ある先生の経験では、、術後、ドレーンからご飯粒が出てきたそうです。