肺切除
のう胞性肺疾患に対しては肺葉切除が必要になりますが、これはまさに解剖学そのものです。僕が初めて肺切除の術者になった時はそれなりに緊張しました。しかし、それは単にやりなれていないだけの話しで、実際に胸を開けてみたらすべてが手術書通りの解剖になっていたことに感心し安堵しました。ただ、生直後の新生児の呼吸困難に対する肺切除では、術前にゆっくりと解剖を頭にいれる時間が無いので、若い先生はどこかで一度、肺切除について半日かけてじっくり手術書を熟読しておくことをお勧めします。
以上は、肺に炎症が無い時の話しで、癒着があればすべてが困難になるのは「総論」で書いた通りです。ただ、胸の中が腹の中と異なるのは、局所を展開しようとする時に胸腔内の術野はどうしても一定のスペースに限定されてしまうことです。
さらに応用問題として肺の分葉異常があったりすると手術の難しさは何ランクも上がります。肺はVital Organですから、判断の間違いは患者の生命に直結したりします。では、分葉異常に対する正しい手術方法はなんでしょうか?それはやはり正しい正常解剖がどこまで理解できているかにかかっています。
そういう意味でも肺切除は解剖に始まり解剖に終わると言っても過言ではありません。