胃食道逆流症
機能を作る手術、QOLを向上させる手術です。消化管吻合も無いし、ある意味とても小児外科らしい手術かもしれません。新生児のGERの延長としての症例と重度身障者に対する手術が多いと言えます。この手術でもやはり大事なのは局所の展開です。肝外側区域をFreeにして胃食道接合部を露出しますが、この辺りの視野はふだんあまり見ませんので、初めての手術ではなかなか手が動かないかもしれません。先輩の先生たちの手術をたくさん見ておくことをお勧めします。重度身障者の患者さんでは胸郭の変形や側彎が強く、局所の展開とそれに続く手術操作が難しいことがあります。腹腔鏡下手術でこういった症例を行う報告が多いのは理にかなっていると言えるでしょう。また、手術とは直接関係ありませんが、重度身障者の患者さんに開腹手術を行うと術後に非常に強い炎症反応が起きてDIC/SIRSのような状態になります。これを回避するためにも手術ストレスの少ない鏡視下手術は適切と言えると思います。
さて、GERの手術と言えば、今日はほとんどがNissen手術です。His角を形成するFiller手術はもはや過去の手術となりました。そのNissen手術ですが、どこをどう固定縫合するのが原法なのか分からないくらいに、様々な変法が生まれています。要は逆流が止まり、Gas Bloat Syndromeが起きないのならどんな術式でも良いような気がしますが、外科医には各人こだわりがありますので、決まった術式で症例を重ねるのが良いでしょう。千葉大では原則的に幽門形成は行わず、2歳以下では胃ろうを造設します。カフを巻く際には、食道に15号くらいのネラトンを挿入し、縫い合わせるカフとカフの裏にKelly鉗子を置き、カフがきつくなり過ぎないようにします。出来上がったカフを1針胃に1針食道に固定します。Rossetti変法ですね。また、カフを横隔膜に固定しますが、これもNissenの原法には無いはずです。
ほとんどの症例で効果は明らかで逆流はほぼ止まります。僕自身は経験したことはありませんが、カフまたは横隔膜脚を強く締め過ぎるために術後早期に経口摂取がしばらく取れないことがあります。自分が思うよりももっとルーズにラッピングするのがコツのようです。
カフの逸脱はこの手術では一定の割合で起きる合併症のようです。僕自身も先天性食道狭窄症の患者さんに食道食道吻合と同時に逆流防止をしたことがありますが、数年後に見事にずっこけたことがあります。GERが起こらなかったのは幸いでした。