腸回転異常症

手術自体は特に難しくありません。手術よりもいろいろな判断がより重要になります。
千葉大小児外科で、診断の難しさを痛感させられたのは1992年ころでしたでしょうか。結果としてはミルクアレルギーだったのですが、著明な腹満、胆汁性嘔吐、大量の血便の赤ちゃんが小児科から転送されてきました。消化管造影を行い腸回転異常と診断しましたが、実は全員がその診断に納得した訳ではありませんでした。そうです、僕だけが正常腸回転の範疇に入るとの意見だったのです。しかし、じゃあ、これを開腹しないで保存療法をするかと言うと、、、。結論は試験開腹でした。もちろん僕も賛成しました。結果は腸管の走行に異常は無く、小児科の先生も見たことのないような重篤なミルクアレルギーだったのです。
1990年代後半からは超音波でSMA&SMVを同定・診断するのが当たり前になりましたので、今後はこういったケースは無くなるでしょう。現実に無くなりました。でもやはり、試験開腹をする心理というのは、短腸症候群を何としても避けたいという気持ちから来ていることは間違いありません。
中腸軸捻転で腸管壊死があった時の判断も本当に難しいです。吻合か、腸ろうか、セカンドルックか。腸管の色調とかを見てもその後の再還流後の組織障害の予測は極めて困難です。もう一度、開けるか否かは外科医としての観察力の他に、精神力の強さみたいなものも重要になるのではないでしょうか?僕自身、20代のころと40代のころでは新生児のお腹を複数回、開けるということに対して気魄が少し萎えたような気がします。しかし、小児外科医たるもの、必要とあらば強い精神力で赤ちゃんのお腹を開けなければなりません。
さて、いろいろな判断も難しいのでが、もっと難しいのが手術所見の絵です。どう捻じれていてどう回転が異常なのか、これが悩ましいのです。手術所見を書くのに非常に時間がかかることがあります。術後管理が大変なのは分かりますが、手術後速やかに所見を書きましょう。