膀胱尿管逆流症



僕が研修医だったころは、Politano-Leadbetter (PL)法とCohen法の一長一短が論じられていたりしましたが、現在では特殊な症例を除いて手術はほとんどPL法になったのではないでしょうか?本来、小児泌尿器科医が行うべき手術かも知れませんが、何しろ日本には小児泌尿器科医なんて数えるほどしかいませんので、小児外科医が手術することになります。症例数もメジャーの中ではけっこう頻度が高く割と日常的な疾患です。
PL法は術式もその成功率も「確立した手術」と言えると思います。うまくいって当たり前ですから、確実に逆流を止めることが大事です。僕自身はこの手術は決して難しいと思っていません。しかし、注意しなくてはならないのは、泌尿器の手術って一度合併症を作るとそのリカバーが極めて困難なことです。たとえば、膀胱内から尿管をくり抜く時、この尿管の血流は大丈夫なんだろうかと不安におそわれることがあります。新尿管口に尿管を引き入れる時に腸管をひっかけたなんていう合併症も時々聞くことがあります。ブラインド操作のある手術はやっぱり慎重の上にも慎重が必要ですよね。
泌尿器の手術の合併症が怖い一番の理由は、腸管と違って尿管に長さの「余分」が無いことです。つまり、腸の手術で言えば、最初から短腸症候群の腸を手術しているようなものです。尿管をいじる手術で合併症を作るととたんに立ち往生してしまいます。
つまり、PL法は決して難しい手術ではないけど、ミスは絶対に許されないということです。これは泌尿器の手術ですべてに共通していることです。僕はいつもそれを肝に銘じていました。